研究概要 |
1.コンパクト自己双対的(反自己双対的)複素2次元のエルミート多様体の分類問題に対して部分的な解答を与えることが出来た。以前の研究で正則断面曲率が点毎に一定である4次元概エルミート多様体は自己双対的であることがわかっている。(反)自己双対性は計量の共形変形で不変であるから、山辺の問題の解によって、(反)自己双対的リーマン多様体の分類問題はスカラー曲率が一定であるものの分類問題に帰着することがわかる。スカラー曲率が一定でありリーマン多様体の中で特に代表的なものにアインシュタイン多様体がある。自己双対的な4次元アインシュタイン概エルミート多様体は点毎に一定の正則断面曲率を持つことを以前に示した。本年度はアインシュタイン定数の符号が非正・正の2つの場合に分けて考え、コンパクト自己双対的アインシュタインエルミート曲面の完全な分類に成功した(これは新潟大学の関川浩永氏との共同研究による成果である)。(1)点毎に一定の正則断面曲率を持つコンパクトエルミート曲面Mのスカラー曲率が非正の定数ならば、Mはアインシュタインケーラー曲面、即ち平坦か、Bergman計量を持つ複素2次元単位円板のコンパクト商のいずれかであることを証明することが出来た。(2)また、点毎に一定の正則断面曲率を持つエルミート曲面Mがsemi-symmetric(即ちR(X,Y)・R=0が成立)であるとき、もし曲率作用素が各点で非特異ならばMは弱*-アインシュタイン多様体であることを証明することが出来た。この結果はすでに論文にまとめてあり現在投稿中である。 2.変分学の観点から概エルミート構造の各タイプを特徴付ける問題について、almost Kahler構造を取り扱う時はそのシンプレクティック形式が代表するコホモロジー類の中での変分を考えるのが自然であり、その観点からの研究を現在進行中である。また*-リッチテンソルの諸性質と位相の関係についても研究を進めている。
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