始めに、平面の同相写像において非ハウスドルフ集合の特徴付けを行った。特に、非ハウスドルフ集合がどのくらい有効な不変集合であるかを調べるために、非ハウスドルフ集合により流体化可能性を決定できるかを調べた。そして、非ハウスドルフ集合が2本の直線であるにも関わらず流体化可能でない例を構成した。これを国際会議葉層構造の幾何学的研究にて発表し、論文にまとめた("A non-flowable plane homeomorphism whose non-Hausdorff set consists of two disjoint lines")。このとき、同相写像は非ハウスドルフ集合のまわりで渦を巻いたような状態になる。そこで、この渦をはかる道具の必要性を痛感するに到った。 次に、非特異流にこの非ハウスドルフ集合を応用することを試みた。そこでは、多様体のコンパクト性を仮定しないで研究を進めた。一般にコンパクト多様体上の力学系では非遊走集合が空にならない。このため、非遊走集合に消されてしまい、非ハウスドルフ集合は役に立たない。ところが、非コンパクト多様体の場合、非ハウスドルフ集合が非常に有用な概念であることがわかった。たとえば、非ハウスドルフ集合が空になる場合、どの軸道の極限集合も空になることがわかった。そして、非ハウスドルフ集合が空でない場合は、そこのところに一種の2次元レーブ成分ができることが観測できた。 今後の課題としては、3次元ユークリッド空間の非特異流で、すべての軌道が直線と同相なものを分類することを考えている。これについては、既に、非ハウスドルフ集合が空になる場合について結果を出し、論文として投稿中である。
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