研究概要 |
研究の内容は大きくわけて、2つある。一方は自由境界を伴う汎関数に対する変分問題に関するものであり、もう一方は非線形熱方程式の解の構造に関するものである。 1.自由境界を伴う汎関数に対する変分問題に、離散的勾配流という概念を導入し、停留点の存在問題に適用してみた。離散的勾配流とは、勾配流を時間方向に差分化したもので、それ自身変分法を用いて定義される。ここでは、必ずしも最小点とは限らない停留点に収束する離散的勾配流の存在が示された。また、離散的パラメーターを0に近づけたときの勾配流の漸近挙動について論じ、それが部分例に沿って収束する事を示した。 2.熱方程式の初期値問題の解の一意性について、従来から知らているTychonoff,Widder,Li,Dodziuk,Li-Karpらの諸結果を、特別な場合として含む結果を得た。応用として、調和写像に対する勾配流の一意性を示す事ができる。 また、非線形境界条件を伴った熱方程式の初期値境界値問題の解の爆発について、従来から知られている結果よりも、仮定をゆるめた定理を示した。またその証明も、これまでのものよりもはるかに容易で、なおかつ爆発時刻の上からの評価も得られる。 更に、解の一意性の無いある半線形熱方程式の解の集合の構造を調べた。これまでに、解の集合が連結であるという、常微分方程式論のKneserの定理に相当するものが知られていた。ここでは、与えられた熱方程式の解は、ある常微分方程式の解でもある事を示し、議論を容易にした。
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