数理現象の忠実な数式表現をしようとすると、通常は非線形な方程式が対応する.その場合、知りたい事柄の情報をふくむ解は、方程式の非線形性に応じて様々な様相を示し、数学的な議論を行うには方程式が固有にもつ性質を十分見定めた上で、解析の仕方も各々の場合について適切な工夫をすることが必要となる.楕円型方程式では、Laplace方程式やPoisson方程式の研究が基礎となり、極小曲面、H-surface、capillarityなど多くの方程式が扱われている.ここではそれらに関連して表面が弾力性を持つpendent drop的な膜の方程式をモデルに考え、大きな変形を伴うときの状況を非線形な固有値問題と認識して、その数学的な仕組を明かにすることを課題とした.以前より数理物理の古典理論において膜の変位が微小な場合の線形的な解析については比較的よく知られている.しかし、膜の大きな変位をみようとすると、非線形要素を無視することができず、方程式の取扱いが微妙となり数学的な難さを伴う.その解決の糸口を得るために簡単なモデルで理論的な枠組みの設定を試みた結果、特に問題を1次元化して考えた弾性弦のモデルに対する変分問題に対して small solution と large solution の存在を導き、定性的な解析を行うことができた.また、曲面モデルについての解析は、分岐論的なとらえ方を検討した結果を現在整理中である.今後さらに現実性のある問題が幅広く議論されることを願っている.
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