研究概要 |
L_2(IR^3)で形式的にH_<mu>=-DELTA+q(x)delta(|x|-a)(q(x)はSa={|x|=a}で滑らかな実数値関数,deltaは1次元Diracのデルタ関数)で表わされるSchrodinger作用素を考える。これは、空間に、面密度muq(x)の球面があるときの一粒子の量子力学的運動を記述する。この作用素はSaで境界条件((derutau)/(deltar))_+-((deltau)/(derutar)3)_-=muq(x)u((deltau)/(derutar)は動径方向の微分,u±はSaの外側(内側)からのトレースを表す。これより、muが有限の間は粒子はSaを透過可能である。mu→±∞とすると、粒子はSaを通過できないであろう。即ち、Hmuはmu→±∞のとき内部ディリクレラプラシアンと外部ディリクレラプラシアンの直和(これをH_∞と書く)に収束することが期待できる。本研究で得た結果の主なものは、 (1)mu↑+∞のときH_<mu>はH_∞にノルムリゾルベント収束する。 (2)mu_k↓-∞のときなる実数例がとれて、H_<muk>はH_∞に強リゾルベント収束させることができる。 (2)で一般にはノルムリゾルベント収束はしない(反例がつくれる。)ノルムリゾルベント収束する条件も得られた。これはある種のコンパクト作用素の固有値の増大度に関する条件である。mu_k↓-∞の場合が興味がある。なぜならH_<muk>↓-∞のとき負の固有値が出て来ているが、収束先のH_∞は固有値をもたない正値作用素である。負の固有値についてもある程度の情報は得られている。しかし挙動は複雑である。例えば,q(x)=定数のとき、任意のlambda>0に対して、-lambda^2がすべてのH_<muk>の固有値で、H_<muk>がH_∞に強リゾルベント収束するmu_k↓-∞なる実数例{mu_k}がつくれる。散乱振幅の収束も得られた。 なお、本研究は摂南大学池部晃生先生との共同研究である。結果の一部は1993、11.8〜11.10の数理所でのシンポジウムで発表され、その報告集も出される予定である。詳細は今後一連の論文で発表される予定である。((1),(2)についてはプレプリントがある。)
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