研究概要 |
複数の有限自由度系をある無限自由度系の多様な方向への射影としてとらえる視点は,多岐にわたる数学的分野を包括的に理解し,理論を展開するための指導原理を与えている. 上記の指導原理は,例えば3,4次元多様体の位相的不変量の研究等で格好の活躍舞台を提供され,めざましい成果をもたらした.しかしながらいくつかの有限自由度系の全てを取り仕切る主体は,我々に常に意識されつつも,数学的論証の裏に巧妙に隠され,誰の目にも見える数学的対象としてあからさまにされることは多くなかった.ここでは,位相的,組み合わせ的不変量を積分表現をつうじて統制する主体として確率空間を明確に位置づけ,確率論が元来備える無限系への指向性の具現化を目的としていたものである. 本研究計画の舞台は2次元曲面上のYang-Mills理論によって主役が演じられる.格子ゲージ理論を単体分割された曲面上で適用して,曲面内の曲線によってパラメトライズされた群に値をとる確率変数の系を構成する.円周の様々なはめ込みのされ方が上記確率場のWilsonループ期待値によっていかに区別されるかに興味が持たれる.確率変数の期待値自身は面積に依存する.ループの変形に対して不変な量を得るためには,ループ変数の分布に対し曲線のまつわりにたいして,ある規則によりwordを対応させる.更に随伴不変性から従うwordの簡約則を解析し,得られた組み合わせ論的データを群の既約指標の構造と有機的に結び付けることにより,曲線のまつわりに関する量が評価されることがわかりつつあ
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