研究概要 |
1994年中に発表予定の論文“Properties of holomorphic Wiener functions-skeleton,contraction,and local Taylor expansion"(Prob.Theor.Rel.Fields)において我々は、正則Wiener汎関数にはCameron-Martin部分空間への制限と考えられるskeletonが様々な理由から、合理的に定まることを主張した。Cameron-Martin部分空間はWiener測度で観測すると確率0であるから、確率的構造からskeletonを定めることには意味がなく、あくまで複素構造によって定まるこことに注意する。我々は今回さらに以下のような新しい性質を発見したので報告する。 まず、正則な多項式で表されるWiener汎関数の族を利用して、複素Wiener空間の“正則除外集合"と呼ぶ集合の族を定義する。各正則除外集合はWiener測度0であるばかりでなく、Wiener測度をWiener空間上の縮小線形写像で移したものに関しても確率0である。さらにCameron-Martin部分空間の任意の1点からなる集合は正則除外集合ではない。このとき、各正則Wiener汎関数に対して、変形(regular versionと呼ぶ)を正則除外集合の外で一意的に定義することができる。その結果、各正則Wiener汎関数のregular versionはCameron-Martin部分空間上で一意的に定義され、それは、上に述べたskeletonと一致することが分かる。さらにregular versionにWiener空間上の(無限次元)Brown運動を代入すると、連続な道を持つ等角martingaleになることが証明できる。 なお、この結果は論文、“Regular version of holomorphic Wiener function"にまとめて、Jour.Math.Kyoto Univ.に投稿した。
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