第一に、1・4-4・2mumプリズム分光器(国立天文台との共同開発研究で製作)の改良を行なった。これは、望遠鏡の主鏡の像を正確に検出器の上に結ばせることにより、天体の追尾に多少ムラがあったり大気の揺れで像が動いても波長をずれなくするためのものである。その結果、波長3mum帯での測定で、正確に目的天体のスペクトルを比較星のスペクトルで割算することができることがわかった。さらに、検出器の読みだし回路を改良し感度がバックグラウンドで決まる限界に適するようにした。 このプリズム分光器をセロトロロ天文台の1・5m望遠鏡につけて、まずわれわれの銀河系の中心部にある赤外線源の3mum分光偏光観測を行なった。その結果、波長1-2mumに見られるべき乗則からの偏光の超過がすべての天体で観測された。これが星間ダストの一般的な性質なのか、それとも銀河系の中心のダストに特有の性質なのかはまだわからない。また、波長3.0mumにある吸収で偏光がさらに大きくなっていること、波長3.4mumの吸収では偏光の超過が見られないことがわかった。赤外線源の1つでは偏光の角度が3・0mumの吸収の近傍で回転していることも見いだした。 さらに宇宙科学研究所の1・3m望遠境を使い、活動的銀河核の観測を試みたが、感度がバックグラウンドによるので、もっと小きな視野(12秒角以下)を用いないとS/Nの良い観測がむずかしいことがわかった。望遠鏡の追尾モニターの手段を改良し、視野をしぼった観測を他の望遠鏡も使用して行なう計画である。
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