1.散逸の効果を含んだ銀河形成の過程を解明するためのコンピュータシミュレーションのプログラムを開発する計画に関しては、まず既存のtree codeにindividual time-stepを導入し計算速度を向上させることを昨年度行なった。本年度は、昨年度とは異なる方法でindividual time-step化をおこなった。これにより計算精度を保ったまま計算速度を約5倍程度高速化することができた。昨年度とは異なる方法でindividual time-step化した理由は、SPHと呼ばれる手法を用いて散逸の効果をコードに含める場合との整合性をより向上させるためである。現在共同研究者と共同で、この高速化したコードに散逸の効果を含める作業を進めている段階である。 2.銀河の分布を定量的に解析するための新たな手法の確立に関する研究に関しては、ボイドの分布関数から得られる統計量が宇宙の初期条件の違いを明確に表現できることが明らかとなった。さらに離散数学における一分野のグラフ理論を応用し、シミュレーションから得られたデータから星座グラフと呼ばれるグラフを生成し、それらのグラフに銀河間の距離を使って様々な重みを付けてグラフのスペクトルを計算すると、このスペクトルの分布の違いから、ボイドの分布関数と同様に宇宙の初期条件の違いを表現できることが明らかとなった。これらの新しい定量化の手法が、従来用いられてきた2体相関関数よりも、より明確に宇宙の初期条件の違いを表すことが可能であることも明らかとなった。これらの研究成果については現在論文としてまとめている段階である。
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