電荷2/3のクォークと電荷-1/3のクォークの質量の間に階層性が存在するために生じる弱アイソスピンの破れの起源が複合模型にあるものとして、標準模型を越える理論の可能性について研究を行った。これに関する今年度の具体的成果は以下の通りであり、現在論文投稿準備中である。 複合模型に基づいて電弱対称性の破れを実現するためには、強い相互作用のダイナミクスを解き、束縛状態として現れるヒッグス粒子が真空中で凝縮することを示さなければならない。このような解析を行う手法としては主に二つの方法が一般的に用いられる。一つは補助場としてヒッグス粒子を導入し、それに対する有効ポテンシャルを求める方法で、もう一つはカイラル対称性の破れを伴う場合に有効な方法でフェルミオン自己エネルギーに対するシュヴィンガー・ダイソン方程式の非自明解を解析する方法である。 弱アイソスピンの大きな破れを自然に説明する機構として提唱した「臨界不安定性機構」を実現する最も容易な模型は、強い相互作用として四体フェルミ相互作用を導入するものである。ところが、最近このような型の模型の中に、上の二つの解析法が両立せず矛盾が生ずるような模型が存在することが指摘された。これは臨界不安定性機構を採用した現象論的に有効な模型を議論する上で問題となるところである。そこで、今年度に於いては、この点の解決を目指した。結果として、解析方法を改善する事により指摘されたような矛盾は避けられることを明らかにした。 今後はこの点を踏まえ、現象論的に有効な模型の完成をめざす計画である。
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