超対称模標準型においては、R-パリティの保存則により、最も軽い超対称粒子(LSP)は安定であり、したがって宇宙の暗黒物質の候補となる。最も有力なLSPの候補であるニュートラリーノについて、宇宙の残留密度を計算することが本研究の目的である。従来この残留密度を計算するにあたっては、LSP同士の対消減過程のみを使って議論していた。しかしLSPと次に軽い超対称粒子の質量が比較的縮退しているときには、LSPとその次に軽い超対称粒子(NSP)との共同対消減過程を考察しなければならないことが最近指摘された。水田と山口は昨年この質量の縮退が、HiggsinoがLSPの主成分であるときには自然に成りたち、共同対消減過程が主な消滅過程であり、その結果従来の結論に反してこの場合の残留密度が非常に小さくなることを示した。今年度、この研究において得られた知見は、LSPとスカラー・トップ粒子が縮退することが、多くのパラメーター領域で実現され、そのとき、LSPとスカラー・トップ粒子の共同対消減過程で残留密度が決まることを示した。実際、質量の縮退が10〜15%のときに、LSPの残留密度が宇宙の臨界密度程度になり、このとき、LSPは宇宙の暗黒物質になる。
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