まず、奇々核の回転運動の一般論として、内部波動関数のR^1変換に関して定義されるクランキング模型の指標量子数と、角運動量の偶奇性として定義される本来の指標量子数との関係について考察を加え、両者は等価であると広く信じられているが、実はそうでないことを指摘し、両者の対応が破れる実際的な状況を2例挙げた。次に、2準粒子配位のつくる指標四重項が、どのような回転バンドを形成するかを図式的に分類し、2準粒子がともにDeformation‐Aligned軌道にある場合は、クランキング模型では扱えないことを指摘した。さらに、(h_<11/2>)^2配位の回転バンドの諸性質を強結合形式の粒子・回転子模型を用いて調べた。^<120.124>Csに関しては包括的な試行計算を行い以下の3点を示した。a)陽子・中性子間の残留力だけでは120Csのエネルギー準位の大きな指標逆転分裂を再現できない。b)r変形だけでは指標逆転分裂の再現のために現実的でない「r‐reversed慣性能率」が必要とされる。c)自然な「渦なし流体運動の慣性能率」を持つr変形と残留力とを組み合わせると指標分裂だけでなく電磁遷移確率も良く再現さえる。最後に、質量数〜130の核についてc)の方法で系統的な計算を行い、実験的なスピンの同定に系統的な誤りがある可能性を示唆した。以上の結果は単著者論文としてNuclear Physics Aに投稿し受理された(卷・号は未定)。なお、当初進展を期待したコリオリ減衰問題と集団・独立粒子自由度の分離法との関係の研究においては、特に新しい結果は得られなかった。 また、より微視的な手法への第一歩として、各種Skyrme型有効相互作用の対称核物質中での対相関特性をBCS近似で調べることも行い、カットオフに対しプラトー領域が存在することを発見した。現在、論文を共著で執筆中である。両研究ともに、購入したワークステーションを常時活用して、数値計算、結果の整理・保存、グラフ描画、論文執筆を行った。
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