東大物性研-高エ研が、VUV高輝度光源計画におけるR&Dの一環として研究を進めている加速空洞(RF周波数500MHz)では、空胴に接続するビーム・ダクトの径を適度に広げることにより、空洞内の高次モードをビーム軸方向に選択的に取り出し、それをダクトの一部に装着した電磁波吸収体で減衰させる。理論計算によれば、1OMEGAcm程度の抵抗体を用いれば、VUV高輝度光源加速器におけるほとんどの高次モードに関して、バンチ結合型ビーム不安定性の成長率を十分小さくすることができる。この着想を実証するために、平成5年度に本加速空洞のプロトタイプ・モデルを製作し、低電力による特性試験を行った。プロトタイプの本体はアルミ製で、それに接続するビーム・ダクトとして、アルミ・ダクト(本体と同材)、反応焼結SiCダクト(抵抗値0.2〜0.4OMEGAcm)、常圧焼結SiCダクト(抵抗値20OMEGAcm)の3種類を用意した。各ビーム・ダクトを装着した場合の空洞の高周波特性を、ネットワーク・アナライザーを用いて測定した結果、SiCダクトを装着した場合、アルミ・ダクトと比べて、ほとんどの高次モードのQ値が、反応焼結SiCで1〜3%程度に、常圧焼結SiCで0.5%程度以下にまで減衰することが確認された。これは計算コードを用いた数値計算による予測とよく一致する結果である。特に常圧焼結SiCを用いれば、VUV光輝光源の定格運転に必要なだけの高次モード減衰が十分実現できることが明らかになった。さらにSiCダクトの損失パラメーターを測定して、加速器のダクトとして使用した時にビームが引き起こす壁電流の抵抗損失による発熱を評価した結果、上記2種のSiCダクトがいずれも簡単な冷却系を設けるだけで、加速器用ダクトとして実用に耐えることが分かった。今後は大電力モデルを試作し、実機に向けた総合試験を実施する予定である。
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