研究概要 |
本年度は、広い意味での位相欠陥として、ブラックホールの周りの量子場のふるまいについて研究した。 最近、三次元時空におけるブラックホール解が発見されたので、私はその周りのスカラー場の量子効果について考察した。三次元ブラックホール時空は、anti-de Sitter時空の持つ対称性の一部が破れたものとして考えることができる。いいかえれば、相転移時に形成される宇宙紐の周りの時空のように、ある種の欠損角のある時空となっている。したがって、この時空内の任意の点でのスカラー場の二点関数は厳密に閉じた形で求めることができる。私はこれを二種類の異なる方法(モード関数法、鏡映法)で求めた。スカラー場の量子効果はこの二点関数を元に計算することができる。私は数値計算を用いて具体的に量子効果としての物理量(エネルギー運動量テンソル、スカラー場の自乗期待値)を求めた。またこの具体的な表式を用いて時空構造へのバックリアクションを議論した。以上を二篇の論文としてまとめたものは、雑誌に掲載が決定されている(Classical and Quantum Gravity, Physical Review D)。(論文をまとめるに当たっては、都立大の牧琢弥氏に加わっていただいた。) 同様な時空構造はより最近になって三次元時空以外にも拡張された。私はそのような一般化された場合についても、スカラー場の量子効果を計算する方法を示した。また、具体例として五次元時空の場合に数値計算を行った。以上を論文としてまとめたものは、雑誌に掲載が予定されている(Classical and Quantum Gravity)。(論文をまとめるに当たっては、都立大の牧琢弥氏に加わっていただいた。)
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