光カー効果は入射する光の強度に比例して物質の屈折率が変化する現象であるが、屈折率変化の主な原因の1つとして分子配向状態の変化によるものがある。これは、液体、プラスチック結晶などのように分子がランダムな方向を向いている物質中で、パルスレーザを用いて光カー効果を起こさせる事により、分子配向の過渡的な秩序状態をつくれる可能性を示しており、新しい相転移機構の研究方法になる可能性が期待できる。分子配向の制御のための知見を得るために行った、光カー効果の実験により次のような結果が得られた。 比較的大きな光カー定数をもつ、液晶、5CBのアイソトロピック相におけるパルス誘導ブリルアン散乱(ISBS)の回折光強度の時間変化の観測を行った。2つのポンプパルス光の偏光をV-Hとする事により、アイソトロピック相では光カー効果による過渡的グレーティングからの回折光が観測できた。この回折光強度の減衰はポンプパルス光により生成された分子配向が乱れる過程を反映している。また、この減衰はネマティック-アイソトロピック転移点に近づくにつれて長くなる傾向が見られた。又、ポンプパルス光の偏光をV-Vとする事により、光カー効果による回折光に加えて音波からの回折光も観測された。この時、回折光強度は一度、0になってから再び増加するという奇妙な振る舞いを示す事がわかった。これは、音波及び光カー効果による誘電率変化の符号が逆であるとすると説明される。
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