研究概要 |
本研究の目的は光第二高調波発生(SHG)法やラマン散乱などの光学的手法を用いて、結晶や膜成長の素過程を研究し、固体の成長における動的な機構を解明するところにある。本研究の成果は以下の通りである。 1)Si(100)基板加熱用のホルダーを設計し製作した。これを用い、さらに現在構築中のSHG観測専用の真空槽を用いればSi(100)表面上のTMA,TMG分子のSHG観測が開始できる。 p型-GaAs(100)面上にCs層を成長させたとき(負の電子親和力〔NEA〕表面)の第二高調波(SH)光強度の変化を光電子電流と同時に観測した。その結果、SH光強度と光電子電流は異なるタイミングで大きくなった。この表面ではCs吸着初期過程で電子がCs層からバルク層に移動するときにバルクバンドが大きく曲がって光電子が出やすくなり、次にCsを多く吸着し電子がCs層に戻るとその自由電子の寄与でSHGが強くなることがわかった。 有機薄膜であるCuPcを成長させその膜厚とSH光強度の関係を調べた。その結果このCuPc膜には膜面と垂直な方向に異方性が生じており、その原因による対称性の崩れによりSH光が発生していることがわかった。 Si/Ge混合結晶のSH光を初めて観測した。SH光強度はx〜80%の時に最も大きくなり、SH光強度の異方性も同じ濃度付近で大きくなった。これは入射およびSH光の光子エネルギーがSi/Ge混合結晶のE_0およびE_1ギャップに共鳴するからであることがわかった。 ラマン散乱によるGaAs(100)表面上のTMA分子の物理吸着相の成長の仕方を観察した。吸着TMA,TMG分子のラマン散乱の観測に成功したのは本研究が初めてである。吸着TMA分子のラマン散乱絶対断面積は気相のそれの3.0倍であることがわかり、これと局所電場の解析より物理吸着相中のTMA分子は表面に平行になっていることがわかった。
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