研究概要 |
第一原理バンド計算により、水素吸着GaAs(100)表面および、GaAs(111)表面の電子状態を調べた。GaAs(100)表面の計算では、水素の被覆率がこれまでの、0.5,1.0原子層の場合に加え、1.5,2.0原子層吸着した場合の計算も行った。吸着率が0.5,1.0原子層の場合には、これまで行ってきた吸着サイトに加え、いろいろな吸着サイトに関する計算を行い、ポテンシャル曲面を求めた。この結果、水素吸着反応の反応初期における、水素の吸着位置が正確に求まり、最もエネルギー的に有利な吸着機構を求めることができた。また、水素の表面被覆率を、1.5,2.0原子層とした計算の結果、水素の吸着反応は最終的には1.5原子層まで進むことも確かめた。これは、2.0原子層水素が吸着した場合には、electron counting模型からの要請である、電子を各結合に割り振った後、余った電子がない状態、即ち非金属的な電子状態を作れないことに由来している。この場合も、0.5,1.0原子層水素吸着表面同様、水素吸着により大きな構造変化があり、かつ、表面の化学結合数が減り、ダングリングボンド数が増える場合にも成り立つことである。また、これらの水素吸着反応はシリコン表面における水素の反応(水素が1原子吸着することにより、バックボンドが弱まり、さらに水素が接近することで、バックボンドが切断される)と良く類似していることを確かめた。さらに、水素吸着構造はシリコン表面における、Nothrupの'canted row'模型と類似しており、これらの水素反応が、半導体表面一般に言える普遍的な現象であることを確かめた。
|