研究概要 |
C_<60>化合物はアルカリ金属をドープすることにより、A_3C_<60>(A:Na,K,Rb,Cs)を作り超伝導性を示すことが知られている。本研究では水素を電子供与体に選び、核磁気共鳴(NMR)をプローブとして実験を行う予定であった。しかし以下に述べるように、超伝導の本質をより直接観測する事が可能になったため、当初予定していた水素を用いず、アルカリ金属をドープしたC_<60>化合物での炭素(^<13>C)のNMRを行い、以下の事項を明らかにした。 1.アルカリ金属をドープしたC_<60>化合物の合成を通常の気相反応法の他にアジ化物を用いた合成を行い、高い超伝導分率の試料(Na_2RbC_<60>,Na_2CsC_<60>,K_3C_<60>,K_2RbC_<60>,K_2CsC_<60>,KRbCsC_<60>,Rb_3C_<60>,Rb_2CsC_<60>,RbCs_2C_<60>)を得ることができた。 2.超伝導に直接関与する電子の状態密度N(E_F)を知るために、超伝導転移温度T_c以上で^<13>C核の核スピン-格子緩和時間T_1を測定した。炭素のサイトが3つあるために緩和回復曲線を3成分に分解し、各サイトごとのT_1を求めることができた。各炭素サイトのT_1の温度変化は金属に特徴づけられるKorringa則に従うことを明らかにした。 3.緩和の原因を議論し、それが状態密度に比例することより状態密度を3つある炭素の各サイトごとに求めた。T_cと状態密度の関係は、この超伝導がBCS理論で説明されるフォノンによる通常の超伝導であることを強く示唆していることを明らかにした。
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