1。電子状態の対称性の異なる二つの色素分子(Mg-オクタエチルポルフィリン(OEP)、Mg-オクタエチルクロリン(OEC))をそれぞれポリスチレン、PMMA、ポリイソブチレン、エポキシ樹脂、ポリブタジエン等にドープした試料にたいし、時間相関単一光子計数法により時間ゲートを設定してレーザーの散乱光を除いてゼロフォノン線を含む領域でサイト選択蛍光分光を行い、単一サイトにある色素分子の蛍光スペクトルを求めた。さらに、このスペクトルを一次の電子格子相互作用を考慮した理論に基づいて解析し、電子格子相互作用強度で重みづけられたポリマーの低振動数モードの有効状態密度(WDOS)を求めた。WDOSはポリマーによって形状やピーク周波数が異なるが、ピークが一致するように横軸のスケールを変えると以上の試料で求めたすべてのWDOSの形状はほぼ一致することがわかった。今のところ、この珍しい現象が説明できる理論はなく、今後その研究が必要とされる。実験的にももっと組成の異なった試料(例えば、サイズの異なるゲスト分子、無期ガラス、生体蛋白質等)に対しこの研究を進める予定である。 2。ポリスチレン、PMMA等のポリマーについて、遠赤外吸収及びラマン分光を行ったが、形状の比較が出来る程度のSNの良いスペクトルが得られなかった。今回は、中性子散乱によって得られたポリスチレンの低振動モードの状態密度を用いてWDOSとの比較を行った。その結果、電子格子相互作用は、振動モードの周波数の約二乗に比例して弱くなることがわかった。このことを明らかにするには、今後、より多くのポリマーの状態密度を求め、それぞれのWDOSとの比較を行う必要がある。
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