研究概要 |
ポリシラン(+Si・R・R'+)は、Si原子の一次元鎖と有機系の側鎖基R,R'からなっており、天然の量子細線と呼べる物質である。このポリシランは、その一次元性に起因した特異な電子物性の発現が期待されている物資である。最近になって研究代表者らの行なった、熱アニールを施した薄膜試料を用いた光物性に関する実験から、不均一幅の影響が大きいことが明かとなった。そこで本研究ではこの不均一幅の影響を明らかにするため、単結晶作製の試みを行なった。残念ながら現時点では、大きさ、強度等光学測定に十分耐えうる単結晶試料を得るには至っていない。しかしながら、結晶成長に重要な要因・問題点が徐々に明かとなりつつある。現在のところ一番重要な問題点と考えられるのは、ポリシラン分子の枝別れである。高分子結晶の作製のためには、構成分子の分子量・構造の均一性が非常に重要である。ところが、ポリシランはアルカリ金属を用いた脱ハロゲン重合法という激烈な反応を用いて作製されるために、重合途中の分子が損傷し枝別れが生じているのではないか、ということが従来から心配されてきた。実際、発光スペクトルの測定から、この重合法で作製されたポリシランには、枝別れに起因する欠陥準位が存在することが明かとなった。このため、現在開発されつつあるより穏やかな重合法を用いて作製されたポリシランを用いることが、結晶作製の上で鍵となると考えられる。今後は、この新重合法によるポリシランを用いて結晶作製を試みる予定である。
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