研究概要 |
同一の結晶構造を有する希土類化合物において、電子比熱係数とサイクロトロン有効質量の比較を行うために、RIn_3(R:希土類元素)系の純良単結晶を育成し、0.2Kから2.2Kの温度範囲で比熱測定を行った。測定の終了した物質は14種類のRIn_3のうち、R=Pm,Ybを除く12種類である。この様に多くの種類の希土類化合物の低温比熱を系統的に測定した研究はこれまで皆無である。 本研究により、RIn_3系の電子比熱係数は4f電子を持たないLaIn_3の5.3mJ/K^2molという値に較べて、様々に増強されていることが分かった。その増強割合は非磁性物資であるPrIn_3の1.6倍から重い電子系物質であるCeIn_3の23倍まで多岐に渡っている。多くの反強磁性RIn_3においては3から10倍程度である。これは、広い意味での電子とマグノン間の相互作用が4f電子数によって変化していることを表している。 また、RIn_3系では主に軽希土類に関してドハース・ファンアルフェン効果の測定により、伝導電子のサイクロトロン有効質量が決定されている。電子非熱係数の大きな物質においては、確かにサイクロトロン有効質量も大きくなっているが、必ずしも両者は比例していない。その原因は現在のところ不明である。 最低温度付近では、多くの反強磁性RIn_3は核比熱による大きな比熱が観察された。これは、反強磁性体においては希土類サイトに大きな内部磁場が生じることによる。核比熱から希土類サイトにおける内部磁場の大きさを見積れるが、その大きさは定性的には4f電子の軌道角運動量によるものと理解される。
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