本研究では、希土類磁性薄膜のファラデー効果を用いた高分解能局所磁場測定を開発した。直線偏光した光を磁性薄膜に入射すると、局所磁場の大きさに比例して偏光面が回転する(ファラデー回転)。したがって、ファラデー回転角の大きい磁性膜を局所磁場測定したい試料の近傍に置き、偏光板を用いることにより、局所磁場の大きさを光の明暗のコントラストとして測定することができる。 低温での測定が必要なため、ヘリウムガスフロー型クライオスタットと磁場発生用に銅線の空芯コイルを作製し、これらを偏光顕微鏡と組み合わせることにより高分解能局所磁場測定を構成した。磁性薄膜としては単位磁場あたりのファラデー回転角の大きいEuSe膜を高真空電子ビーム蒸着装置を用いて作製した。磁場の強弱に対応する光の明暗像をCCDカメラを用いて撮影し、コンピューターを用いてデジタル化し画像処理を行い、局所磁場分布に変換した。手始めとして、高温超伝導体単結晶の磁化過程の観測を行い、次のような知見を得た。 ・臨界状態における局所磁場プロファイルは試料の形状を反映し、従来の反磁場係数の無視できる場合に対するモデル(Beanモデル)よりも、最近解析的に計算された反磁場係数の大きい場合のモデル(Brandtの理論)との良い一致を示した。 ・実験データのBrandtの理論によるフィッティングから得られた臨界電流密度はこれまで知られている値と矛盾しない。 ・双晶境界が存在する試料では、10K程度の低温においてもこれに沿って磁束が超伝導体に侵入しやすくなることがあることが明らかになった。 今後、低ノイズのCCDカメラを用い画像の積算を行うことにより、データの大幅な改善が期待される。
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