本研究の目的のひとつである、タンマン炉によるイッテルビウム(特にイッテルビウムニッケル系)化合物の単結晶育成については、参加が極めて著しい希土類の化合物の単結晶育成が行えるように炉内を10_<-6>torrの高真空まで減圧出来るように炉を改造した。その結果、この炉を用いたブリッジマン法でランタンニッケル、セリウムニッケルおよびガドリニウムニッケルで残留抵抗比が約50の純良な単結晶を得ることに成功した。現在は、さらに蒸気圧が高く単結晶育成が困難である本研究の目的の物質であるイッテルビウムニッケルの単結晶育成をおこなっている。また、ニッケルと同じ遷移金属であるコバルトとの化合物である希土類コバルト3対1の化合物についても単結晶の育成を行った。 本研究のもうひとつの目的であるホール効果等の測定装置の開発については、7テスラの超伝導マグネットの中でホール効果や磁気抵抗とあわせて比熱、磁化の測定が行えるように装置の開発を行っている。本申請で整備されたデジタル電圧計は、ホール効果測定時のホール抵抗測定や比熱測定時の温度計の抵抗測定に用いている。 現在のところ最も注目すべき結果は、希土類コバルト3対1の化合物の物性である。まず電気抵抗は昇温するにつれて線形性を失い飽和する。また、ランタン、プラセオディミウム、ネオディミウム、サマリウムと4f電子が増えると系統的に電気抵抗の線形性が回復する。これは、コバルトの3d電子の比較的大きな状態密度がフェルミ面近傍に存在する事、この3d電子とフェルミ面の相対的な位置関係が4f電子のレベルによって決められることを示唆し、4f電子と3d電子の新しい相関を暗示しているように思える。今後も、イッテルビウム化合物と共にこの物質系の展開に期待している。
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