研究概要 |
当初の計画に従い、メゾスコピック系、特に微小な0次元系(量子ドット)での電子状態を、相関効果を量子力学的に扱って理論的に解明した。 (1)量子ドット集合系でのホッピング伝導の研究:電子の波動性と電子間相互作用を同時に取り入れるため、ランダムなサイト・エネルギーを持ったハバ-ド模型を考察し、数値計算を実行して電子状態を求めた。磁場のある場合にZeeman効果を考慮することで、正の磁気伝導度が生じることを初めて示した。この成果を論文にまとめ、また低温物理学国際会議(8月,Eugine)で発表した。 実際の量子ドット系で実験をする場合には、ドット中の複数レベルの存在が重要になる。上述のモデルを拡張し、その効果を考察した。(日本物理学会、秋の分科会(10月,岡山)にて発表。) さらにスピン軌道相互作用の効果を研究した。その場合、磁気伝導度は弱磁場では負に、強磁場では正になることがわかった。この結果は(半定量的にも)銅微粒子フィルムでのホッピング伝導の実験結果を説明する。この成果をMoriond会議(1月,スイス)で報告し、また現在論文を準備中である。 (2)単一の量子ドットに閉じこめられた少数電子系の研究:電子間相互作用を第一原理から取り入れて電子構造を決定するため、大型計算機を用いて大規模な数値計算を行った。前年度にはCoulomb相互作用の場合を系統的に調べたが、今年度は相互作用が遮蔽されている場合や引力の場合に拡張して研究を進めた。これらは最新の量子ドットの実験や、微粒子の実験と比較できる。この成果は次回の日本物理学会(3月,福岡)で発表予定である。
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