1.Au-Ge薄膜 AuとGeの原子濃度がほぼ等しいAu-Ge合金膜(膜厚2-7nm)を作製し、超伝導臨界磁場の温度依存性を測定した結果、膜厚の減少とともに、GL理論から予想される温度依存性からはずれ、Gu/Au/Ge積層膜でみられたような平行磁場印加による臨界温度の増大が観測された。平行臨界磁場の温度依存性が、Kogan-Nakagawaによる理論を改良した対数項を含む式でうまく表されることを見いだした。この対数項は、スピン軌道散乱の大きい2次元超伝導体における電子局在の効果に起因するものと考えられる。 2.Cu-Ge薄膜 Au-Ge以外の系での磁場増強超伝導の探索の試みとして、Cu-Ge系薄膜を作製し、その超伝導特性を調べた。Cu-Ge合金膜ではAu-Ge系に比べて臨界温度が低く、約60at%Cuの組成で最大(〜0.7K)となり、5nmより薄い試料では0.5K以下に低下した。この系での磁場増強超伝導の探索のためには、さらに、希釈冷凍機の温度域での実験が必要である。 3.キャラクタリゼーション 抵抗および電子回折の測定結果から、Au/Ge薄膜における超伝導はAu-Ge合金層の存在によるものと推測される。また、X線光電子分光によるAu/Ge系薄膜の深さ方向プロファイルには、AuとGeの積層順序の違いにより、界面付近の濃度分布に大きな相違がみられて興味深く、今後、現有のオージェ電子分光・高速電子回折装置によるその場分析も行って、非晶質Ge上に形成される極めて薄い金属層のキャラクタリゼーションを進めていく予定である。
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