本研究の目的は、液晶対流系に対して、摂動として振動シェア-流(力学的変調)をかけ、その結果生じる新しいタイプの不安定の性質を明らかにすることにあった。そのための基礎的な実験を行った結果、以下の事が明らかとなった。 1 コントロールパラメータを対流発生点直前の状態に固定した上で、摂動を印加し、対流が発生するまでの時間を測定した。対流発現時間は振動の振幅(≦18mum)及び振動数(≦5Hz)の単調減少関数となった。 2初期状態としてコントロールパラメータを臨界値以下に固定した無流状態としたとき摂動を印加し続けても対流の発生は観測されなかった。 力学的摂動の影響は、振動方向が、対流ロール軸に対して垂直な場合の方が平行な場合より大きい。 以上述べた通り、この研究により新しいタイプの不安定性が確認され、その定量的な性質も明らかとなった。摂動としての振動シェア-流とディレクターベクトル場の大きなゆらぎとのカップリングが不安定性を促進していると考えられ、またこの効果には異方性があることもわかった。さらに注目すべき結果として、摂動印加による対流の発生の後も振動を与え続けた場合、一度発生した対流ロールパターンがしだいに消滅し、その後再び発生するという現象も見い出されているのでさらに詳しい実験が望まれる。 この一連の実験において、CCDカメラを取り付けモニターによる観察を行なったため測定が容易となり、またアクチュエーターの振動振幅と印加電圧の関係を調べる上でも大変役立った。スチールビデオは、対流状態の画像による比較検討のために用いられた。 今後この研究で得られた結果をふまえ、さらに新しい性質を探るために、コントロールパラメータをより高い値に固定し、初期状態として、より複雑な対流パターンをとったときの摂動の影響を実験的に調べていくことが重要な課題である。
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