超流動中の素励起の振る舞いとボ-ズ凝縮の素励起への影響を明らかにするために以下の二つを課題とした 1.素励起をエネルギーと運動量の関数として規定する動的構造因子が、ボ-ズ・アインシュタイン凝縮によって質的に変わるかどうか。 2.1K以上の温度領域において、超流動ヘリウムの諸性質の温度依存性は主にロトンの振る舞いによって支配されている。従って、ロトンのエネルギー、寿命等の温度依存性を精密に決定することが重要となる。 実験及びデータ解析から得られた結果を以下にまとめる。 1.2ロトン・ラマン散乱スペクトルの形状と強度は、超流動相のみならず常流動相においても最低温度の実測スペクトルの単一ローレンツ関数による畳み込み積分で再現できる。このことは、ボ-ズ凝縮によって動的構造因子が超流動-常流動転移温度において質的に変わらないことを示す。(課題1) 2.ローレンツ関数の幅はロトンの寿命に対応し、その温度依存性は、ロトン-ロトン衝突を考慮したランダウ-ハラトニコフの理論から、約1.8K以上の温度領域で付加的なずれが見られる。このずれは、ロトン-ロトン衝突にロトン-ボ-テックス衝突の寄与が加わるためであると考えられる。 3.ローレンツ畳み込みスペクトルと実測スペクトルのエネルギーの比較から、各温度におけるロトンのエネルギーを決定した。ロトンエネルギーは、超流動相のみならず常流動相においてほぼ一定であることがわかった。(課題2) 4.液体相における全圧力領域において同様な結果が得られた。 以上の結果を、第20回低温物理学国際会議(米国・オレゴン)及びそのサテライト会議(米国・ミネアポリス)において発表した。また、“2ロトンラマン散乱の温度依存性"、“2ロトンラマン散乱の圧力依存性"、“超流動ヘリウム4のラマンスペクトルにおける微細構造"の3編の論文としてフィジカル・レビゥ-に投稿予定である。
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