固体中での結晶粒成長のダイナミクスを議論するための計算機シュミレーションプログラムを開発しこれを実行した。2次元セル構造の計算機シュミレーションは今日では充分行われている。併せて理論的な統計力学的取扱いもなされている。しかしながら理想的な2次元系をつくる事は実際的には困難であり、実験との比較を行うための3次元系の効率的なシュミレーションの方法の開発が望まれていた。既にポッツモデルによるモンテカルロシュミレーションは行われているがそのコストパフォーマンスは著しく悪いだけでなく、物理的な時間空間スケールが決まらないという原理的な困難を抱えていた。そこでセル構造の自由度をセルの頂点の自由度にまで縮約したモデル「バ-テックスモデル」に基づくシュミレーション方法を開発した。即ち、セル壁(界面)を三角形分割し界面の運動方程式より各三角形頂点の運動方程式を導き、これを時間方向に積分する事で各頂点、即ち、セル形状の時間発展を追跡する事が出来る。空間時間的な粗視化の目安となるカットオフ長以下でのイベントはトポロジーの変化(セル間でのスイッチング及びセルの合体)として処理した。この様にしてポッツモデルによる方法での困難をすべて克服する事が出来た。シュミレーションの結果、面数分布及びセルサイズ分布に関してはポッツモデルによる大規模シュミレーションで得られた結果をカバーしただけでなく、今回新たにAboav-Weaire則及びLewis則が3次元セル系でも成立する事を高精度で確認した。後者はセル構造による空間充填という純粋に幾何学的な要請によるものと考えられる。これらの結果は2編の論文にて出版する予定である。 これと並行してフラストレートした氷のモデルを統計力学的に論じた。このモデルは界面上での新しいタイプの相転移として今後発展させる予定である。(論文投稿中)
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