多くの非平衡系においては、系の非平衡度を増していくと、空間パターンを持つ巨視的秩序状態が不安定化し、発達した乱流状態への遷移が生じる。この遷移領域近傍では、しばしば空間パターンをもつ秩序領域と乱流領域が複雑に混在した状態が現れる。このような状態は、「時空間的間欠性」と呼ばれ、時空間カオスの普遍的タイプのひとつとして近年注目を集め盛んに研究がなされている。しかし、これまでの実験的研究は準1次元的パターン形成系に限られていた。そこで、本研究では2次元パターン形成系における時空間的間欠現象のプロトタイプとして液晶対流系におけるグリッド・パターンの崩壊現象を取り上げ、その振舞いの詳細を実験的に調べた。その結果、次のような成果を得ることができた: 1.秩序領域と乱流領域の可視化・判別を行なうことが可能な光学的観測系および画像処理方法を考案・構築した。 2.この観測・処理系を用いて、(1)乱流領域の出現確率は遷移領域においては印加電圧Vとともに単調に増加すること、(2)乱流領域が形成するクラスターの平均サイズ<S>はVとともに急速に増大し、ある域値電圧V_cで発散する。すなわち<S>〜(V-V_c)^<beta>である。(3)乱流クラスターのサイズ分布はV_c近傍ではベキ的である。等の結果が得られた。これにより時空間的間欠性が「パーコレーション」現象と類似の臨界現象的振舞いを示すことがわかった。 現在、さらに時空間的間欠性の発生点近傍での臨界現象的振舞いに関する研究も進行中である。
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