研究概要 |
3次元的な乱雑系である多孔質ガラスと、1次元準周期系であるフイボナッチ多層膜における、光の弱局在について調べた。 多孔質ガラスは、分相法によって作成されるもので、その細孔の空間的な分布がフラクタル性を持つことが、X線回折や中性子回折の研究から分かっている。そのような媒質中で多重散乱された光の状態を、3,000Åから10,000Åの平均細孔径を持つ多孔質ガラスを用いて、コヒーレント後方散乱のピーク形状や、透過率スペクトルを測定することにより、調べた。コヒーレント後方散乱は、代表的な光の弱局在現象であり、その角度幅が、媒質中の光の輸送平均自由行程に比例することが知られているが、更に詳しい理論的解析により、その形状が乱雑媒質の次元性を反映することが分かっている。我々の試料から得られた結果を詳しく検討した結果、光のベクトル性を考慮にいれた3次元的な拡散に関する理論で、よく説明できることが分かった。これはおそらく、光を用いた測定では、X線回折などの場合と比べてはるかに大きな空間的スケールを見ているために、フラクタル性が反映しないのであろうと考えられる。更に多孔質ガラスに関しては、飛行時間の測定から光の拡散係数を求め、ボルツマンの関係から光の輸送速度を計算した結果、どの細孔径のものにおいても、ガラス中の位相速度の約60%の値を得た。輸送速度が、乱雑媒質中でこのように非常に遅くなっているのは、波長と同程度の大きさの誘電体構造による干渉効果だと思われるが、詳しい理論的な解析が持たれる。 また、光学的な1次元準周期系であるフィボナッチ多層膜を、2種類の誘電体材料をガラス基板上に交互に蒸着することにより作成し、透過スペクトルによる評価及び、白色光干渉計による分散関係の測定を行った結果、理論的に予測されるものとほぼ一致した、フラクタル的な構造が得られた。
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