研究概要 |
1.外部流とつり合って静止している渦糸の3次元的な平衡形を局所誘導近似のもとで解析した.外部流を磁場と読み換えれば,荷電粒子の軌跡と同等になることを発見した.このアナロジーを利用して,典型的な流れ場中での渦糸の形を計算し,その意味するところの考察を行った.他に,音響射線とのアナロジーも成立する. (1).一様流と剛体回転を重ね合わせた流れの中における渦糸の形は,弾性棒の平衡形や対称こまの運動と同等である.このアナロジーをもたらす機構をハミルトン力学系の観点から解明した.接ベクトルをそれ自身を軸にして回転しても渦糸の形が不変であることが本質であり,対称性と自由度の低減という枠組みで理解できる. (2).点状,あるいは線状のわき出し(吸い込み)流中の渦が,円錐に巻きつくらせん状の形をとることを示した.巻き数の円錐の頂角に対する依存性を調べ,そのトポロジー的な意味を見いだした. (3).単純シア-流や,放物形の速度分布をもつ軸対称ジェットの中の渦糸が,くねくねした形を取り易いことを示した.後者では,波形に変形した渦輪が得られるが,その解をもとに,ジェットの強さと波の数との関係を導いた.従来,変形した渦輪は短波長不安定として解釈されてきたが,この結果は長波長モードによっても説明できる可能性を示唆している. 2.伸び縮みする非定常楕円渦の内部を表すモデルとして,ひずみ流中におかれた楕円形の流線を持つ線形流を構成し,その短波長安定性の解析を行った.不安定のメカニズムは楕円形不安定によって説明がつくが,渦線の伸び縮みの効果によって,不安定に至る初期条件のパラメータ領域が大幅に広がることが明らかになった.伸びるときよりも縮むときのほうが,攪乱の相対的な増幅率が大きい.
|