研究概要 |
本研究の目的は,液体-気体界面上に直鎖高分子を展開し,これを擬2次元高分子系とみなして,ラマン分光の方法によりその物性を調べることである.今年度の推捗状況と研究成果は以下のとおりである。 1.高分子鎖展開用の水槽の試作. LB膜作製用の水槽をヒントに,展開面積可変,表面圧測定可能な水槽を設計試作した.高分子展開膜では,脂肪酸塩等の曲型的な成膜分子に比べて剛性が非常に高くなる傾向が見られた.展開膜の一様性を高めるため,膜を圧縮する際に膜形状の変形を伴わない様な構造に,水槽を改良した. 2.気水界面に展開可能な高分子試料の選択. 数種類の高分子試料について様々な溶媒と組み合せて,その展開性,成膜性,安定性などをテストした.現状ではLB膜化可能な高分子として知られるポリアミック酸(ポリイミドの前駆体)をプロトタイプとして用いている.今後,両親媒性を側鎖に持つ直鎖高分子の合成を行う. 3.気水界面展開単分子膜試料のin situラマン分光. 予備実験としてステアリルアルコールの単分子展開膜についてラマン分光測定を試み,光学系の構築,改良を行った.その結果,現有の高感度ラマン分光システムにより単分子膜の測定が可能となった.ただし,水のラマン散乱がかなり大きいため,データの蓄積には数10分の積分時間を必要とした.今後,分子鎖のコンフォメーションを詳細に議論するため,分解能と感度の両立を目指して光学系を更に改良する.
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