研究概要 |
Sr蒸気を対象とし、その自動イオン化の絡む準位において現れる量子干渉効果を観測する最も効率の良い系・方法を見つけるのが本研究の目的である。金属蒸気の生成にヒートパイプオープンを用いる為、パイプ内に導入する希ガス(He)との衝突の影響を避けることができない。また、この衝突の効果を積極的に利用できる可能性も検討するため、この原子系が関わる準位についての希ガスとの衝突緩和の影響を、レーザー分光学的手法を用いて調べた。 対象とした準位は、第一励起準位(5s5p^1P_1)、自動イオン化準位(4d5d^1D_2)および、5Snd^1D_2(n=6〜8,14〜39)のリュードベリ準位であり、その吸収スペクトルの形状変化を調べた。リュードベリ原子についてはその準位からの衝突イオン化により生成されたイオンの吸収スペクトルを得る方法を用いた。また、第一励起準位については、吸収スペクトルのシフト、幅の変化が観測されなかった為、励起光と参照光の入射のタイミングをずらす方法で緩和時間を得た。 5s5p^1P_1準位についてのHeとの衝突による断面積は0.864±0.104A^2で、5s4d^1D_2や、5s4d^3D_1へ緩和している様子が観測された。レート方程式モデルを作り、実験結果を再現した結果、衝突緩和において双極子遷移の選択則、異重項間禁制は有意に現れないことが分かった。また、n≧15のリュードベリ原子については、主量子数の増大に対して衝突断面積は増大せず、むしろ減少して一定値に近づいていく様子が観測された。一般に、電子の軌道半径が大きいほど断面積が大きくなるが、高リュードベリ原子と希ガスの衝突の場合には、希ガスはイオンコアと電子に同時に相互作用できなくなる為だと解釈できる。一方、圧力シフトはn≧14の準位では有意な差は見られずほぼ一定値が得られた。自動イオン化準位の線幅、シフトの変化については、5snd^1D_2(n=6,7)の準位とn≧15の高リュードベリ状態のほぼ中間の値が得られた。
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