GMSの可視画像データを用いて地表における日射量を推定することは、 (1)GMSが特定の時期に限定されずに継続的に運用されている実用衛星である、 (2)日本を中心とする中部〜西太平洋域の広大な範囲についてほぼ均質なモニタリングができる、 (3)静止衛生であるため、極軌道衛星に比べて観測頻度が高い、 (4)同じく静止衛星の利点として、放射の非等方性に因る推定誤差を比較的とり扱いやすい、 等の理由により、地上観測や航空機・極軌道衛星を用いたリモートセンシングに比べ、現実的な日射量モニタリングの手法として優れていることが、大気放射学に基づく簡単なモデルによって証明された。しかしながら、現状では、経済的理由あるいは計算機資源面で立ち後れにより、一般(特に在野)の研究者が衛星データを合理的に支障なく入手し、アルゴリズムの改良等の研究開発に利用することが難ししいことが明らかになった。これを解決するためには、GMSや関連衛星のデータを受信・保管するデータセンターを中心とする、情報頒布のための基盤整備を行うことが急務である。また、物理学的な問題点として、現在、ほとんどの衛星搭載可視放射計の絶対較正が行われておらず、現実にその感度が経年的に劣化していることが明らかになった。このセンサの劣化は放射計によって異なるものであり、気候変動のように長期間にわたるデータや異なる衛星のデータを合わせ用いるような研究用途にとっては深刻な誤差要因となり得る。これを解決するためには、前述のデータセンターのような何らかの責任分担機関によって、衛星打ち上げ時から後まで含めて、放射計の出力についての継続的な監視が行われることが必要であると考えられる。
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