地殻表層での岩盤の変形挙動、強度および水の流れは、岩盤内に多数存在する大小さまざまな割れ目、特に開口した割れ目の分布・挙動に大きく支配されている。岩盤内あるいは岩盤中に構造物を建設する場合にはこれらの割れ目の影響を適切に評価する必要がある。岩盤はほとんどの場合いくつかの応力覆歴を受けており、全体としてみるとランダムに分布しているように見える割れ目を有している。このまま割れ目群の影響を考慮しようとすると統計的な扱いしかできないが、地史を考慮することで一つの応力場を反映した割れ目系を分類抽出することが可能であると考えられる。さらに、岩盤の挙動を知るうえでもう一つ欲しい情報は割れ目間隔に関係するものである。割れ目間隔についてはcolumnar jointsやboudin structureなど、引張応力下で形成された割れ目について詳しく調べられており、それによれば岩石の物性と変形速度がわかれば理論的に割れ目間隔を決定することができる。そこで、本年度の研究では、タ-ビダイトから成る堆積岩分布地域と柱状節理を有する火山岩分布地域を調査地域として、割れ目に関する基礎データを蓄積するとともに、割れ目形成にかかわる性質について考察した。概要を示すと以下の通りである。 1.タ-ビダイト中の泥岩に発達するEn echelon tension gashにおいて、最長のベインはほぼその中央に位置し、一連のベインから成る割れ目ゾーンの長さと幅の間には線形的な関係が存在する。 2.タ-ビダイト中の砂岩に発達するジョイントは必ずしも層理に垂直ではなく、同時代に形成した地層においてほぼ一致した走向傾斜を有し、このジョイントが一つの応力場を反映して形成されたことを意味する。 そのほか多くの知見が得られたが、今後これらの性状を力学的に解明していく必要がある。
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