1.野外調査 北上山地および四国の延性剪断帯について、野外調査と試料の薄片観察とを行った。特に北上山地では、層理面に平行な延性剪断帯を多数発見した。観察の結果、やはり従来の多くの研究の通り、延性剪断帯の外の非変形の部分から、剪断組織の発達した延性剪断帯の中央部へと、再結晶粒径が減少していく様子が観察された。 変形実験 ノルカンファーなどの有機化合物を、顕微鏡下で剪断変形させる実験を行い、再結晶粒径の変化を観察した。観察事項は、以下の通りである:(1)変形開始後比較的早い時期に、試料と変形装置との境界部付近や、試料の結晶粒界などに、細粒(径数mum)な再結晶粒からなる剪断帯が形成される;(2)剪断帯形成後は剪断帯に歪が集中する;(3)変形に要する荷重は、変形初期に高く、後に徐々に下降するというパターンをとる。以上の結果より、次の様な判断を下した。(1)剪断帯での再結晶粒径の細粒化は変形初期の高い応力下での転位クリーブにより生じた。(2)細粒化の後、剪断帯中での変形機構が転換し、低応力で変形が進行するようになった。(3)細粒な剪断帯ででは、結晶表面積の密度が高いため、変形機構として結晶粒界でのすべりまたは拡散が大きく寄与していると判断される。(4)変形後の岩石(模擬物質)の粒径は、転位クリーブが変形に寄与している時点の応力値を反映しているにすぎない。 今後の研究計画 上の結果のみでは、本当に細粒化が高い応力のために起きたのかわからない。剪断帯での応力分布は非常に不均質だと考えられるからである。今後は、岩石模擬物質中に応力のマーカー、例えば微小な球形の弾性体を混ぜて、細粒化と応力値との関係をよりはっきりさせていく必要がある。
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