研究概要 |
赤石裂線の断層破砕帯から採取した断層破砕岩類(断層ガウジおよびカタクラサイト)の鏡下観察を行い、断層面(just boundary)からの距離に応じて破砕、変質の様式およびK-Ar年代値がどのように変化するかを検討した。以下にその概要を述べる。 ○大局的にみると、断層面からの距離が離れるにしたがって、変形及び変質の程度は低下する。今回さらに精度を上げて10mごとに試料を採取し検討した。その結果、断層面近傍10〜20mの範囲においても、変形および変質の程度が低い部分が存在し、また断層面から100m離れた部分でも、その周囲の岩石よりも破砕および変質の程度が著しい部分が存在することが明らかになった。このことは、変形および変質が断層運動に伴って起こるものの、その様式はかなり不均質であることを示している。また変形の著しい部分では例外なく著しい粘度化を受けていることから、変形と変質は空間的にも時間的にも密接に関係していることが確認された。また、赤石裂線北部と南部において、ductile/brittle transition領域で形成されたと考えられるマイクロナイトを見いだした。このことは、現在の赤石裂線の少なくとも一部はマイクロナイト帯が露出する程度の削剥を受けていることを示している。 ○各断層破砕岩試料細粒部に含まれる粘度鉱物類の組み合わせ、および各種粘度鉱物の結晶学的な性質をXRDを用いて解析し、その後それぞれの試料についてK-Ar年代測定を行った。その結果、雲母粘度鉱物の結晶度指数とK-Ar年代値にはきわめてよい相関があることが明らかになった。すなわち結晶度の低下にともなってK-Ar年代値の若返りが認められた。両者の関係は指数関数で記述され、その相関係数は0.94である。この結果から求められた赤石裂線の変質年代は15Maとなった。 以上の結果の一部は“Timing of cataclastic deformation along the Akaishi Tectonic Line, central Japan"のタイトルでContribution to Mineralogy and Petrologyに受理されている。変形史に関するトピックは順次論文にまとめる予定である。
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