北海道の空知-エゾ帯の天塩地域から夕張岳-芦別岳にわたる地域の空知層群上部の17の調査ルートの試料に基づいて、まずUnitary Association法による化石分布帯および各ルートの対比を行った。この結果、空知層群上部の放散虫化石群集は、全部で11のUnitary Associationに区分され、これをさらにA-Dの4つのbiochronozoneに統合した。これにより17の調査ルートにおける試料相互の層位的な関係が明かにされた。A帯はParvicingula cosmoconicaとEmiluvia chicaの産出で特徴つけられ、B帯はHolocryptocanium barbuiとCrolanium pythiaeの産出により、C帯はArchaeodictyomitra lacrimulaとPseudodictymitra depressaの共存で、またD帯はAngulabracchia sp. DとSethocapsa depressaの産出で特徴づけられる。さらに、Baumgaetner(1984)等との対比から、これらの化石帯は白亜紀前期Valanginian-Barremianにわたるものであることも明かとなった。 白亜紀前期の堆積物の中にはArchaeodictyomitra属・Thanarla属・Pseudodictyomitra属に含まれる種が数多く知られており、属の定義や帰属に関し多くの不明な点が残されている。今回得られた種の中には、それぞれの属の間の中間的な形態を示すものがあり、系統関係を推定する手がかりとなる。また、従来一括されてきたArchaeodictyomitra属の中には殻孔の配列にいくつかのパターンが見られ、殻の形態とあわせて検討中である。
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