研究概要 |
野外調査は西南日本内帯の秋吉、阿哲、帝釈、日南、青海の各石灰岩で行い、ルートマップの作成とともに詳細な試料の採集も合わせて行った。また、大洋中の海山起源石灰岩と考えられる西南日本内帯の秋吉帯中の石灰岩体との比較検討の意味も含め、国内における同時期の陸棚性炭酸塩岩を代表する南部北上山地および阿武隈産地相馬周辺でも野外調査を行い、有孔虫化石の含まれた試料の採集を行った。上記の野外調査によるデータと採集した試料の処理・検討を通し、秋吉石灰岩ではこれまでの研究で得られていた約50のフズリナ類の出現・消滅で特徴づれられる時間面をもとにして小型有孔虫類の生層序学的分布の概要を把握するに至っている。なお、秋吉石灰岩における小型有孔虫類の生層序学分帯、個々の分類群の分類学的検討は現在検討を進めている。帝釈石灰岩においては中期石炭紀後期から後期石炭紀にかけてのフズリナ類を中心とした有孔虫群集を報告した(Ueno and Mizuno,1993)。また、阿哲石灰岩北方の岡山県神郷町に分布する前期白亜紀の油野層基底レキ岩中に含まれる石灰岩レキ中より秋吉帯起源と考えられる前期石炭紀後期と後期石炭紀の有孔虫群集を報告し、秋吉帯を含む西南日本内帯にみられるパイルナップ構造の形成が白亜紀前期にはすでに終了していたことを述べた(Ueno et al.,1994)。日南石灰岩、青海石灰岩を含め、当該研究において採取した試料の多くについては室内処理を現在継続中である。その他に、これまで当該テーマと並行して進めてきた東南アジアの後期古生代有孔虫類についても、西南日本内帯で得られた有孔虫類の分類・生層序学的データも含め、両地域に見られる有孔虫群集の比較とその特徴、年代論、後期古生代における有孔虫類がらみた古生物地理についても言及した(Igo et al.,1993;Ueno and Igo,1993;Ueno and Sakagami,1993;Ueno et al.,1994)。
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