研究概要 |
4次にわたる国際深海掘削計画(ODP)の航海によって、南極海地域の放散虫化石についての知識は飛躍的に進歩した。古第三紀の放散虫群集も従来断片的にしか知られていなかったが、報告者(Takemura,1992)はODPLeg 120のインド洋南部の試料を元に、南半球高緯度地域では初の始新世中期から漸新世にいたる分帯を提唱した。この分帯を元に、報告者はアメリカ合衆国Northem Illinois UniversityのLing教授との共同研究を行い、大西洋南部の高緯度地域で掘削されたODP Leg 114の試料の古生物学的、生層序学的研究ならびに古海洋学的研究を行った。 従来あまり古生物学的検討のない南極海域の古第三紀放散虫のうち、生層序学的に重要で多産するTheocorys属について、その分類・系統に関する研究を行った。南極海域からのTheocorys属を6種にまとめ、それらの生存期間を決定し系統を考察した。この結果は論文として現在投稿中である(Takemura,et al.,in prep.,Micropaleontology)。 上記と平行して昨年から引き続き、大西洋南部のODP Leg 114の生層序学的研究を進め、3つのSiteの研究を終えて、インド洋南部のODP Leg 120の2つのSiteとの対比を試みた。現在の結果として、インド洋南部で提唱された3つのzoneは大西洋南部でも識別でき、各zoneの境界も同層準に対比できる。この他10以上の古第三紀放散虫のbiohorizonが、南極海域の大西洋・インド洋側で対比に有効であることが確認された。この生層序及び対比の結果については、現在Ling教授と共同で論文を投稿準備中である(Takemura and Ling,in prep.,Micropaleontology)。 南極海域では漸新世初頭に、著しい海水温の低下が知られている(Wei,et al.,1992)。この層準は、報告者によるAxoprunum irregularis Zoneの基底であることがわかった。さらにこの層準付近では多くの種(Eucyrtidium antiquum,Theocyrtis diabloensis等)の出現・消滅などが認められ、放散虫群集が大きく変化することが判明した。
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