超薄切片法を隕石試料に対して用いて電子顕微鏡観察・分析用の試料を作成した。使用した試料は、オリビンが主要な構成鉱物であるCVコンドライト(Allende及びNingqiang隕石)のマトリックスである。超薄切片法を隕石試料に対して適用する際には、日本原子力研究所環境安全研究部の佐藤努博士と愛媛大学理学部の村上隆助教授に様々なアドバイスをしていただいた。なお、ウルトラミクロトームは日本原子力研究所環境安全研究部のReichert社のUltracutを、透過電子顕微鏡は同研究所のHitachiH-800を使用させていただいた。試料の前処理について 試料は、真空デシケーター中でエポキシ系樹脂を浸潤させた後、シアノアクリレート系接着剤にてスライドグラスに貼り付けて、岩石薄片を作成した。後に低粘性エポキシ系樹脂を包埋する際に、薄片作成時に使用した通常のエポキシ系樹脂が試料の包埋の障害になるという指摘があった。このため、通常のエポキシ系樹脂を浸潤させずに作成した薄片も作成し比較したが、超薄切片はどちらでも作成できた。包埋樹脂は、Polysicence社とTAAB社の低粘性エポキシ系樹脂を用いたが、TAAB社の樹脂で、超薄切片を作成するに十分な硬度が得られた。切削条件について 超薄切片を作成する際の切削スピードは、粘土鉱物を切断する場合よりもはるかに遅く0.4から0.6mm/sの時に良好な切片を得ることができた。結果 粘土鉱物の超薄切片のようにコンスタントに50mmの厚さの試料を切り出すことには成功していない。(いわゆる、chatteringがおきてしまう)。しかし、試料が直径約100mum以下の時には、100nm前後の厚さの試料を切り出すことができた。作成した試料を透過電子顕微鏡で観察したところ、サブミクロンのオリビンの数の頻度が、イオンシンニングを用いた場合よりも多くなる傾向が見られた。これは、イオンシンニングを用いた場合には、粒径の小さいものが脱落しやすいためであると考えられる。しかし、細粒な数十nm以下の粒径の鉱物を観察しやすい厚さに試料を切削すると上述の様に良い切片が得られない。現在も、試料サイズなどを調整し、更に薄い試料を得られる条件を探している。
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