研究概要 |
Ca_2SiO_4に含まれるPの濃度を変数にして,常温で出現する結晶構造を,結晶学的及び熱力学的に考察した.Pの濃度が低いときには,高温から冷却されると熱力学的安定相への順次相転移する.しかし,Pの濃度が高くなると変調構造が出現し,しかもその変調の波長(N)は化学組成(特にP/(Si+P)=xの値)に依存した.これらの間には非常に良好な相関関係が依存し,式N=4.370-2.50xで表された・ただしxの範囲は0.118<x<0.250である.一次元のインコメンシュレート相の反射はO=ha*+kb*+1c*+nkと表すことができる.ただしh,k,l,nは反射の指数である.変調の波数ベクトル(k)はTEMを用いた電子線回折法で(1/N)a*+c*と決定できた.また,変調の波数ベクトルが紙面に垂直になる方向からの格子像も撮影することができた。Pが比較的少ない場合,偏光顕微鏡による薄片観察から,インコメンシュレート相は直行ニコルでは斑な消光をすることから,同一結晶粒内にインコメンシュレート相と熱力学的安定相のalpha'相が共存することが確認できた.この組織は,単結晶のalpha相が冷却されると,最初にalpha'相がラメラとして晶出し,その後ラメラの間に残ったalpha相がインコメンシュレート相への転移した結果形成されたと考えられる.さらにPが増加すると,六方晶系の結晶が得られた.この結晶はa軸方向に2倍とc軸方向に3倍の超構造を示しているので,alpha相が冷却過程に相転移してできたものであると考えられる。
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