研究概要 |
砥部地域のホルンフェルスは,砥部町つづら川下流域に東西約1km,南北500mの範囲に渡って分布する.塩基性片岩とし,ホルンフェルス化の層厚は10-200mである.K-Ar年代による検討から,これらは石鎚コールドロンで代表される中期中新世酸性火成岩類の火成活動に関連していると考えられる.この地域の鉱物帯に分けられる.一方,面河地域のホルンフェルスはいわゆる石鎚コールドロンの東側にのみ分布する.ホルンフェルスは泥質片岩および塩基性片岩を原岩とし,それらの片理に沿って発達する.ホルンフェルス化した三波川変成岩の層厚は約50-100m程度で,石鎚スカイライン沿いでは2層準認められた.この地域のホルンフェルスは泥質岩の鉱物組み合わせに基づき,黒雲母帯および斜方輝石に分けられる. 黒雲母-燐灰石地質温度計または普通輝石-斜方輝石地質温度計によって算出された温度条件は,砥部地域では普通角閃石帯が490-540℃,斜方輝石帯が750-900℃で,面河地域では黒雲母帯が約560-570℃,斜方輝石帯が570-910℃である.両地域におけるホルンフェルスの各鉱物帯の厚さおよび変成温度条件から推定される“見かけの地温勾配"は約5-10℃/mに達する.砥部および面河地域のホルンフェルスについて,F,ClおよびOHの相対的フガシティーを計算した.全体的傾向として,砥部・面河両地域とも変成温度の上昇とともにf_<HCl>が上昇している.特に,今回,面河地域・石鎚スカイライン沿いの斜方輝石帯の露頭において連続サンプリングで検討した.その結果,f_<HF>/f_<HCl>比は薄片オーダーでは比較的一定であるものの,露頭オーダーではわずか40mの層厚で大きく変化することが明らかになった.また,f_<HF>/f_<HCl>比と変成温度条件とはほぼ正の相関を示す. 熱拡散モデルを用いて計算すると,これらのホルンフェルスは,異常に高温の流体(約900-1000℃)が地質学的に極めて短時間(<100年)に通過することによってのみ説明される.
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