当初、予定していたターボモレキュラーポンプは取り扱い業者の都合上入手不可能となったため(他業者の同じ性能以上のものは本補助金では購入不可能であった。)、超高真空用高精度リ-クバブルや特別注文の配管等を購入し、2系統の試料溜を試料導入系に配置することにより、共吸着可能な試料導入系を製作した。 ガリウム砒素(100)基板の清浄法としてイオンボンバードメント&アニーリング(IBA)を用いていたが、表面の平坦性や、表面化学種がガリウムのみに偏る問題があった。濃塩酸溶液処理後、基板表面が塩化ガリウムで終端され、さらに、水に塩化ガリウムが溶解することにより、砒素で終端される表面構造が得られることを角度分解X線光電子分光法(ARXPS)を用いて確認した。なお、濃塩酸処理後のガリウム砒素(100)基板が原子オーダーで平坦であることは原子間力顕微鏡法(AFM)を用いた他の研究者によりにより確認されている。 また、193nm、355nmの波長の紫外線レーザーを、濃塩酸処理後の基板に照射したところ、193nmでは比較的弱いパワーの3mJ/Pで塩素に帰属されるスペクトルに減少が見られるのに対して、355nmでは20mJ/Pまでパワーを上げなければ減少は見られなかった。これは、塩素、又は塩化ガリウムは193nmで光脱離をするのに対して、355nmで熱的に脱離をするためと思われる。今後、さらに塩素の作用によるガリウム砒素基板表面の清浄化機構を理解するため、真空チャンバー内で、塩素、又は塩化水素ガスによるガリウム砒素のエッチング機構について研究することを計画している。 室温で放置したSi(100)基板表面(一部Si-Cになっている。)にトリメチルガリウムを20L程度吹き付け、吸着させた後、さらにトリチメルインジウムを20L程度吹き付けたところ、ガリウムのスペクトルに減少傾向が見られた。これがインジウムとガリウムのメチル基交換反応にともなるメチル化ガリウムの脱離によるものか、インジウム吸着によりガリウムの光電子放出阻害によるものかを、追実験を通して、詳しく調べていきたいと考えている。
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