オクタポールイオンガイド付きの2重質量分析装置を用いて、クラスターイオンと気体分子との衝突反応について研究し、その絶対反応断面積を測定した。以下に成果を要約する。 (1)アルゴンクラスターイオン、Ar_n^+、と希ガス原子との衝突反応について研究した。その結果、蒸発、電荷移動、融合の3とおりの反応過程が観測された。蒸発過程の断面積はAr_n^+の幾何学的大きさの程度であり、Ar_n^+と標的原子とが直接衝突する場合に起こることを明らかにした、一方、融合過程は、Ar_n^+と標的原子とが正面衝突するときのみ起こることが分かった。以上の実験事実は、分子動力学を用いたシミュレーションによって再現された。 (2)メタノールクラスターイオン、(CH_3OH)_nH^+、の希ガス原子を標的とする衝突誘起反応を研究し、蒸発反応断面積の衝突エネルギー依存性を測定した。その結果、衝突による内部励起の過程は標的原子がクラスターイオン内のある1個のCH_3OH分子と相互作用することによって始まること、および反応断面積はクラスターイオンと標的原子との幾何学的大きさを反映した剛体球衝突モデルで説明できることが分かった。 (3)加熱蒸発を用いて金属クラスターイオンを生成する装置を製作した。現在のところ、最も単純な系としてナトリウムクラスターイオン、Na_n^+、の衝突誘起反応について検討をすすめた。その結果、蒸発反応の断面積がクラスターの電子状態を反映した顕緒なサイズ依存性はあることが分かった。
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