(1)周期律表のIIIA族の元素(La、Y、Sc)、第四周期の元素(KからZnまで)、またランタノイド系列の元素のうちCe、Sm、Eu、Gd、Tb、Luについて金属内包フラーレンが生成するかどうかを検討した。その結果、金属内包フラーレンを生成する金属原子の種類は、La、Y、ScのIIIA族及びいくつかのランタノイド系列(Ce、Gd、Tb)に限られていること、また金属内包フラーレンを構成する高次フラーレンのサイズはC_<82>にほとんど限定されていることが実験的に検証された。またLa@C_<82>、Y@C_<82>については更に液体クロマトグラフィーを用いて分離精製を行い、可視紫外・近赤外吸収測定や電子スピン共鳴スペクトルの温度変化測定を行った。 (2)金属内包フラーレンの作成に実際に使用された金属-炭素混合ロッドのそれぞれについて、レーザー蒸発法-飛行時間型質量分析法により、どのような金属-炭素二成分クラスターが生成するかを調べた。全ての場合について、正イオン引き出しモード、負イオン引き出しモード、中性クラスターの光イオン化モード、の合計三種類の検出法について調べ、実際に金属内包フラーレンの生成が報告されている元素とそうでない元素について、金属-炭素二成分クラスターの分布に違いがあるかどうか検討した。負イオン引き出しモード、中性クラスターの光イオン化モードの場合には、MC_n(n>4)のクラスターの分布と、金属内包フラーレンの生成との間には相関が認められた。また他の研究グループでのみM@C_<82>の生成が認められたEu、Smの場合には、今回MC_n(n>4)のクラスターは観測されなかった。この実験事実は、MC_n(n>4)のクラスターが金属内包フラレーンの生成過程に大きや役割を果たしているためとして理解された。MC_nの代表としてKC_6、ScC_6、YC_6について行った予備的なab initio計算結果もこの考え方を強く支持した。
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