本研究の目的はペニングイオントラップ装置を用いて短寿命の不安定核原子やマイクロクラスターの質量を従来法より高い精度で測定することにある。本年度は、比較的短寿命の不安定核原子の精密質量測定を行うための準備実験として、放射性同位元素の生成、及び分離実験を重点的に行った。 放射性同位元素の生成は、理研リングサイクロトロンで加速した高エネルギー重イオンを金属箔タ-ケットに照射する方法を用いて行った。具体的には、炭素、窒素、酸素、キセノン等の各イオンビームを、金、銀、鉄、タングステン等の金属箔タ-ケットへ照射することを試みた。ターゲット中に生成された放射性同位元素の検出、定量は各同位元素から放出されるガンマ線を計測することで行った。その結果、各々のターゲットにそれぞれ異なる放射性同位元素が何十種類も生成されることを確認した。特筆すべき点は、高融点であることから既存の装置では高精度の質量測定が困難とされているルテチウムやハフニウム等の白金族の放射性同位元素が多数生成されたことを確認した点である。 ところで、このような高融点の放射性同位元素を金属ターゲットから分離する手段には、強力なバルスレーザーをターゲットに照射し同位元素を分離、蒸気化するレーザーアブレーション法が有力であると考えられる。本年度ではその準備実験を行うことを目的として真空装置を作製した。今後、真空装置中に設置した金属ターゲットにパルスレーザーを照射しターゲットに含まれる元素を分離、蒸気化した後、レーザー共鳴イオン化法により着目元素のみを選択的にイオン化して検出する実験を行うことを予定している。
|