研究概要 |
1.配位子の合成および光異性化の検討 本研究を開始した時点では、研究の要となる、ジボスフィニデンシクロブテン(1)の誘導体は、ほとんど例が無かった。そこで、まず種々の誘導体を合成した。即ち、以前我々が報告した方法を用いて、リン原子上にかさ高い2,4,6,-トリ-t-ブチルフェニル基を有し、1,2-位に種々の置換基(R=H,Me,t-Bu,Ph,SiMe_3等)を有する1を合成した。また、ホスファラジアレンの最初の例である1,2-ジホスファ[4]ラジアレン(2)の合成に成功した。次に、合成した1,2の光E/Z異性化について検討し、構造と異性体比の関係等について知見を得た。 2.錯体形成能の検討および物性の評価 合成した1,2について、6族および10族遷移金属錯体の合成を試みた。比較のため、単座配位子であるホスファクムレン類およびその錯体も合成した。典型的な錯体についてはX線結晶構造解析を行い構造に関する知見を得た。(E,E)-1はキレート錯体を与えたが、(E,Z)-1は一方のリンが大きな置換基で覆われるため単座配位子として働いた。しかし、光照射により配位子のE/Z異性化が起こると共に、単座配位型の錯体はキレート型の錯体へと変化した。R=SiMe_3の場合、(E,Z)-1は錯体を形成しなかった。しかし、これも反応系を光照射することにより(E,E)-型のキレート錯体を与えた。即ち、光照射により錯体の形成を制御することができた。さらに合成した幾つかの錯体および配位子の電気化学的測定を行い、酸化還元挙動について知見を得た。なお、Pb錯体については有機合成触媒としての機能を有することを確認した。(E,Z)-体では触媒能はかなり低いが、光照射により触媒能が向上することがわかった。
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