1.本研究者は、既に新規なDABCO型不斉配位子1を開発し、触媒的不斉OsO_4酸化に成功したものの選択性は40%ee程度と十分に満足いくものではなつた。そこで、選択性の向上を目指して、1の置換基Rを詳細に検討する事を目的とし研究を行った。1の合成法は、Rがアルキル基では既に確立していたが、アリール基の場合の合成は未解決であった。Rがフェニル基(1a)、ナフチル基(1b)の場合、Ullmann反応を用いる事によりアリール誘導体を合成する事に成功した。 2.また、二置換型の1を更に発展させ、四置換型DABCO型配位子2を合成する計画があったが、この様な化合物の合成法はまったく知られておらず、新たに合成法を確立する必要がある。S_N2反応によるアミンのアルキル化、N-BOC-ピプラジンのalpha-アルキル化などを検討したが、現在のところ成功していない。 3.以上、合成した配位子を用いオレフィンの触媒的不斉OsO_4酸化を検討したが、現段階では40%ee程度と以前の結果を上回る事はできなかった。 4.2の他の反応への応用例として触媒的不斉Baylis-Hillman反応を検討した。メチルビニルケトンとp-ニトロベンズアルデヒドとの反応において最高47%eeの不斉収率を達成することに成功した。この値はこれまで報告された中での最高値である。今後更にこの反応を検討していく予定である。
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