マラリアの特効薬Qinghaosu(Q)は分子内にエンドペルオキシド基を有する漢方薬由来の薬剤である。Qとヘムの反応で生成する活性酸素種が、抗マラリア活性の作用機構として考えられているが詳細は不明であった。本研究では、ヘモグロビンとQの反応を光吸収およびESR測定によって検討したが、ヘモグロビンとQの錯生成を示唆する知見は得られなかった。次に、モデル研究として鉄ポルフィリン錯体とQの反応を検討したところ、Qのエンドペルオキシド基由来の活性酸素種(・OHラジガル)の生成をスピントラッピング測定法によって検出した。この活性酸素種は強い殺菌作用があることから、Qの薬理作用を考察する上で重要な知見である。本結果から、ヘムとQの反応で生成する活性酸素ラジカルがマラリア原虫に対して抗菌性を発現すると考えられる。しかし、ヘモグロビンとQの反応で活性酸素種が検出されなかった要因は不明であるが、おそらくヘモグロビンの中心鉄イオンの酸化状態および酸化還元電位に依存して活性酸素の生成が制御されている可能性が考えられる。そこで、ヘモグロビンのモデル錯体として分子内にイミダゾール基を修飾した鉄ポルフィリンの合成を行い、現在Qとの反応を性を検討している。本研究の結果は、生物無機化学領域の国際誌に投稿した。
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